先日小学生の男の子が「足の裏が痛くなった」との訴えで来院しました。
足の裏を見てみると、
左足の親指の付け根が赤くなり、熱を持って腫れています。
足の裏、親指の付け根を押すと痛がります。
親指を反らしても痛がります。
歩いていても痛かったそうです。
前日は自転車で遠方に出かけたそうです。
私は患部の状況や痛みが出る前のエピソードなどから、
『種子骨障害』を疑いました。
種子骨とは…
図で示した部分が「種子骨」と呼ばれる骨です。
種のような形をした骨が2個あることがわかります。
種子骨の周りには筋肉や腱が集まっており、
これらの筋肉や腱が効率よく動く手助けをしているのが種子骨です。
この種子骨および周囲が炎症を起こすのが種子骨障害です。
ときには種子骨が骨折したり、骨壊死することもあります。
種子骨障害が起こると、
歩いたり走ったり踏み込んだ時などに足の親指の付け根に痛みを感じます。
その部分を指で押したり、足の親指を強制的に手で反らすと痛みが出ます。
症状が進行すると足を地面につけただけでも痛みがあり、
歩行も困難になってきます。
陸上競技やバスケットボールなどのよく走るスポーツに多いとされています。
その他、空手や剣道など踏み込み動作の多い格闘技にもよく見られます。
種子骨障害は小学生~中学生に多く発生し、
大学生以上になると減少する傾向にあるそうです。
ランニング動作時に地面を蹴り出すとき、
足の親指を上げると土踏まずが緊張して、土踏まずのアーチが高くなります。
その際種子骨はアーチを維持する支点になります。
足を蹴りだした場合には種子骨はクッションの役割をして足を保護します。
以上のように、度重なるつま先立ちの動作や蹴り出し動作が続くと、
種子骨への負担が多くなり、周囲が炎症を起こします。
その他、先天的に内側の種子骨が2つに分裂している場合(分裂種子骨)や、
種子骨への血行が滞り骨壊死を起こし、
これが痛みの原因となっているケースもあります。
土踏まずがしっかりし過ぎている甲高の足(ハイアーチ)は
種子骨障害になり易い傾向があるので注意が必要です。
痛みが強いうちは運動を一時休止し、足を安静にします。
足の裏にかかる負担を軽減するためにクッションを入れて、
体重をかけたときに圧力がかからないようにします。
足底筋に硬さがみられるときには柔軟性を取り戻すリハビリテーションをします。
ほとんどのケースはこのような治療でよくなりますが、
保存療法で効果がない場合には、手術で内側の種子骨を摘出することがあります。
成長期のお子さんは骨の成長に筋肉が追い付かないため、
何をしたわけでもないのに筋肉が張っている子が多く見受けられます。
当院では症状に対する手当ては勿論、怪我の予防にも力を入れています。
普段からの体のケアをお勧めいたします。